法務省公開の登記所備付地図データについて
本記事では、法務省から公開されている「登記所備付地図データ」について説明します。
本サイトでは「登記所備付地図データ」を簡単に視覚化できますが、どのようなデータなのかを把握しておくと一層活用しやすくなりますので、ぜひ一度目を通してみてください。
目次
- 登記所備付地図データとは
- 登記所備付地図 = 地図 + 地図に準ずる図面
- 「地図」と「地図に準ずる図面」の違いとは
- 登記所備付地図データのダウンロード方法
- 登記所備付地図データの中身
- 登記所備付地図データを可視化するには
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1. 登記所備付地図データとは
「登記所備付地図データ」とは、「登記所備付地図」の電子データです。
「登記所備付地図」とは、登記された土地の位置や形状を明らかにするために、登記所に備え付けられている図面です。登記所備付地図があることで「登記簿」と現地を結びつけることができます。
「登記所備付地図」は、これまで以下の表の[1.法務局で写しの交付]と[2.Webで閲覧]の2通りの方法で公開されてきました。そこに2023年1月23日に[3.電子データ(登記所備付地図データ)]による公開方法が追加されました。
登記所備付地図の公開方法 | 窓口 | 証明機能 | 料金 | |
---|---|---|---|---|
1 | 写しの書面を交付 | 法務局 | ○ | 450円 ※1 |
2 | Webで閲覧(PDFダウンロード可) | 登記情報提供サービス | ✕ | 362円 ※2 |
3 | 電子データ(登記所備付地図データ) | G空間情報センター | ✕ | 無料 |
※1:1筆の土地又は1個の建物あたりの手数料。オンライン請求・窓口交付の場合は430円。
※2:1件あたりの利用料金。最初に登録費用(個人300円、法人740円)が必要。
ここで、証明機能があるのは法務局から交付される書面だけであることに注意してください。つまり、証明書として用いたい場合は、法務局から取得しなければなりません。
また、登記所備付地図データは誰でも無償で利用できますが、G空間情報センターのホームページからダウンロードするときに、利用規約を確認し、これに同意する必要があります。
参考記事(外部リンク)
地図データのG空間情報センターを介した一般公開について(法務省)
登記所備付地図データ利用規約(G空間情報センター)
2. 登記所備付地図 = 地図 + 地図に準ずる図面
登記所備付地図に関する法令の規定があるのは、以下の不動産登記法の「第14条」です。
本来は「第14条第1項」にあるように登記所には「地図」を備え付けるものとしていますが、「第14条第4項」では地図が備え付けられるまでの間、地図の代わりに「地図に準ずる図面」を備え付けることができるとしています。
これより、登記所に備え付けられている地図(登記所備付地図)には、「地図」のほかに「地図に準ずる図面」もあることになります。
3. 「地図」と「地図に準ずる図面」の違いとは
不動産登記法の「第14条」によると「地図」と「地図に準ずる図面」は以下のように定義されます。
地図 | 各土地の区画を明確にし、地番を表示するもの |
---|---|
地図に準ずる図面 | 土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するもの |
「地図」には土地の区画を明確にする正確性が求められますが、「地図に準ずる図面」は土地の位置・形状・地番がわかることが条件です。具体的に両者の違いをまとめると以下のようになります。
地図 | 地図に準ずる図面 | |
---|---|---|
作成方法(元になる図面) | 地籍図等 | 明治時代の地租改正事業の図面等 |
呼び方 | 第14条1項地図 | 公図、第14条4項地図 |
正確性 | ○ | ✕ |
マップとの重ね合わせ ※1 | ○ | ✕ |
図面の割合 ※2 | 約58% | 約42% |
※1
「地図」であっても任意座標系のデータがわずかに存在します。そのため、そのまま重ね合わせできないケースもあります。
※2
総図郭枚数に対する割合(令和5年4月1日時点)。登記所備付地図の現状(国土交通省)より。
「地図」には、国土調査(地籍調査)で作成された「地籍図」がおもに利用されています。基準点にもとづき現地を測量して作成した図面なので正確です(ただし、作成年が古いと測量技術の違いによる誤差を含む場合があります)。ほとんどが公共座標系の図面であり、一般的なマップと重ね合わせることが可能です(わずかに例外もあります)。綿密な作業を要するため、整備には時間がかかります。現時点で整備されているのは全体の約58%です。
一方、「地図に準ずる図面」は、明治時代の地租改正事業の図面等が元になっています。現代の測量技術とくらべると正確性に欠けるので、あくまでも土地の位置関係・形状・地番を把握するために利用します。多くは一般的なマップに重ね合わせることができない任意座標系の図面です(公共座標系の図面も若干ありますが、正確を意味する訳ではありません)。
なお、一般によく用いられる「公図」という呼び名は「地図に準ずる図面」を差しますが、登記所備付地図全般のことを「公図」と呼ぶこともあります(本サイトでも「公図」という呼び方を使用しています)。
参考記事(外部リンク)
登記所備付地図の現状(国土交通省 地籍調査Webサイト)
公図って何?〜地図と公図の違い〜(法務局)
登記所備付地図作成作業の実施について(法務局)
4. 登記所備付地図データのダウンロード方法
登記所備付地図データは、G空間情報センターのサイトから以下の手順でダウンロードできます。
- はじめての場合は、G空間情報センターの新規ユーザー登録 を行います。
- 「法務省登記所備付地図データのダウンロード手順 」のページにある【都道府県ダウンロードリンク一覧】から都道府県のリンクをクリックします。
- データをダウンロードしたい市区町村のリンクをクリックします。
- 右上のメニューの「ログイン」をクリックします。
- ログインすると元の画面に戻るので、各データファイル名の右側にある[ 詳細]をクリックして、メニューからダウンロードを選択するとダウンロードが開始されます。
ログイン画面が表示されるので、ログインします。
ここで、データファイル名の末尾の 2022
や 2023
の部分がデータの年度を示しています。2024年4月時点で公開(予定)されているデータは以下の通りです。
データ年度 | ファイル名 ※1 | 公開年月日 | データ抽出時期 ※2 |
---|---|---|---|
2022 | ○○○○○-○○○○-2022 .zip |
2023/01/23 | 2022/01 ~ 02 |
2023 | ○○○○○-○○○○-2023 .zip |
2023/08/31 | 2023/02 |
2024 | ○○○○○-○○○○-2024 .zip |
2024/04/15 | 2024/02 |
2025(予定) | ○○○○○-○○○○-2025 .zip |
2025/春頃 | 2025/02(予想) |
※1:ファイルは以下の規則で名前が付けられています。
※2:全国の登記所からデータを抽出した時期。
5. 登記所備付地図データの中身
登記所備付地図データは、法務省の仕様で作成されたXML形式のファイルです。
このファイルは「地図XMLファイル」と呼ばれ、G空間情報センターからダウンロードしたファイルを以下のように2回解凍すると取得できます。
G空間情報センターからは市区町村ごとにダウンロードしますが、1つの市区町村のデータは、地域や座標系によりいくつもの「地図XMLファイル」に分割されています。例えば、上記の東京都千代田区の場合は29個の「地図XMLファイル」に分割されています。
それぞれの「地図XMLファイル」にはおもに以下の内容が書き込まれています。
- 地図の情報
- 地図名
- 市区町村コード
- 座標系(公共座標n系、任意座標系)
- 空間データ
- 点データ(座標値)
- 線データ(点データで構成)
- 面データ(線データで構成)
- 筆データ
- 大字コード
- 丁目コード
- 小字コード
- 地番
- 面データのid
- 図郭データ
- 地図番号
- 四隅の座標
- 地図種類(旧土地台帳附属地図など)
- 地図分類(法第14条1項地図、地図に準ずる図面など)
- 地図作成年月日
- 含まれる筆データのid
筆データには「地番」と「面データのid」が書き込まれています。この「面データのid」で空間データにある「面データ」と紐付けることで筆の位置と形状がわかるようになっています。
ここで、1つの地図XMLファイルに「市区町村コード」と「座標系」は1つだけ設定されています。つまり、ファイル内のデータの「市区町村コード」と「座標系」は同一になります。
参考記事(外部リンク)
地図情報システムで取り扱う地図情報のデータ形式について(法務省)
6. 登記所備付地図データを可視化するには
一般に地図のデータを可視化するには地理情報用のソフトを用いますが、上記の「地図XMLファイル」は独自の仕様のため、汎用のソフトでは表示できません。
そのため、登記所備付地図データを可視化するには、以下のような方法が必要です。
- 汎用フォーマットに変換してから、地理情報用のソフトで可視化する。
- 本サイトの登記所備付地図データ専用のビューアで可視化する。
地理情報用(GIS)のソフトを使う
まず、1つ目の方法は、「地図XMLファイル」をGeoJSONという地理情報データの汎用フォーマットに変換してから、地理情報用のソフトで読み込んで可視化します。GeoJSONに変換するには、デジタル庁が提供しているコンバータ が利用できます。
このコンバータを利用すると公共座標系のファイルは、平面直交座標(XY)から緯度経度に変換されるので、以下のように地形図と重ねることができます(以下の例はソフトにQGISを使用)。
公図ビューアを使う
2つ目の方法は、本サイトのビューアで可視化します。登記所備付地図データ専用に開発されているので、「地図XMLファイル」をそのまま読み込んで表示できます。
さらに、本サイトでは自分でG空間情報センターからダウンロードしなくても、データファイルのページから本サイトに準備済みのファイルをビューアに読み込んで表示できます。
詳しくは、使い方のページをご覧ください。